青年は踊る心臓の鼓動を必死で押さえながら、あれだけ練習した予定をしばし忘れてしまった。 青年は不覚にも彼女に見とれてとまった。無理も無い…、苦労してここにたどり着いたのは、決して偶然では無いのだから。 が、すぐ平静を装って彼女に問いかける。 「すいません。えっと、この列車たしか止まりましたよね?」 「えっと…何だっけ、あ…」 「あ○○○」 「そう。そうです。あはは、ありがとう」 彼女は微笑んでいた。青年は嬉しくて叫びだしそうだった。しかしそれを必死にこらえながら青年はほぼ予定通りの世間話を続けた。 いい感触だった。思った以上に話が弾む。彼女の気持ちが自分に向いているのが確かに感じられた。